
クインタイル(72度)とバイクインタイル(144度)は、どちらも5(五芒星)に関連する分割角度で、創造性や独特の才能を象徴しますが、テスラは太陽/冥王星のクインタイル、火星/天王星のバイクインタイルを持っています。
冥王星は死と再生の星です。テスラは、自分のテーマそのものを何度も冥王星に終わらせられ、そして自然な流れの中で再生させていきました。そしてどんな極限的な体験をしても、それを糧してまた創造してしまうというユニークさを具現化します。また冥王星は蠍座の支配星ですから、潜在意識や無意識、知られていない闇の世界、裏側にあるものを表に出し、クインタイルという角度がそれを重苦しくない遊びに変えてゆく力を持っています。テスラの冥王星は牡牛座にあり、プロジェクトや仕事を始めては終わらせられたりしても、最終的にそれが新しい次の原動力になる構図が見られます。晩年を迎えるまで、極限状態から不死鳥のように何度もよみがえりを果たした太陽・冥王星のエピソードを見てみましょう。
●三年間の学業を終え帰省し、電気の研究をしたいと両親に告げると父は猛反発。さらに3年間の兵役義務もこの時期やってきて、生きる望みを失うと同時にコレラに感染。9か月死の床を彷徨い、電気の研究をしてもよいという父の許可にみるみる奇跡的に回復。その後兵役逃れではないかと推測される狩猟旅行に出る。
●エジソンの報奨金の不払いや方向性の違い(直流VS交流)から雇用関係を終え失業。工事現場で一時肉体労働に従事するも、現場監督が投資家を紹介してくれ、テスラ電気会社を設立、翌年研究所も設立。
●エジソンとの交流VS直流の泥沼の戦いでエジソンが交流の危険性を声高に主張し動物実験で動物を殺したり、交流を使った電気椅子の処刑法をNY州にとりつけたのに対し、テスラは100万ボルトの交流を体内に通して照明を灯す実験を科学者の前で演じて対抗。
●テスラの研究所が火災で全焼、テスラの業績を証明する実験記録、論文もすべて失う。保険もかけていなかったため金銭的損失は膨大な額になったが、大投資家J・P・モルガンと近しいエドワード・D・アダムス他投資家から資金提供を受け研究所を再建。
●400万ぼるとの高周波発振器による実験を続けたが、その能力はすでに研究所の許容限度を超えて厳しい財政難に直面。ここでまた大富豪ジョン・ジェイコブ・アスター4世からの資金援助、コロラドスプリングス電気会社のレオナルド・E・カーチスから建設用地の提供の申し出を受ける。
冥王星が与える経験は非常にドラマチックで、再生の前の死は非常に辛く厳しい通過儀礼になりがちです。
エジソンと決別・失業した時のテスラの手記にはこうあります。
「どん底の日々もあった。けれども私は労働をものともせず、側溝工事の現場に行って、仕事がほしいと頼んだ。私の上等の服と白い手を見た監督は、作業員らと顔を見合わせて苦笑したが…..、それから『よしわかった。手につばをしろ。側溝にはいるぞ』と言った。私は誰よりもよく働き、一日の終わりに二ドルを受け取った。」Tesla Has Plan to Signal Mars, New York Sin, July 12, 1937.
テスラはこの時期、物質的困窮に傷口を広げられながら、すさまじい心痛と苦い涙で一年間を暮らした、と手記に書いていますが、学業にも秀でた若き発明家がどれほどそのプライドを傷つけられたかを思うと胸が痛みます。
テスラの太陽は蟹座18度「ヒヨコのために土を掘る雌鳥」で、内的資質にあったもので職探しをする度数です。自分が育てている発明の可能性がたびたび冥王星に奪われる経験をしますが、そのたびに支援者や彼の発明やアイデアを支える支援者が現れ再生の機会が与えられるのがこの太陽/冥王星です。直観から生まれるインスピレーションは山ほどあったテスラですが、新しい発明の構想はあっても資金難等の理由で着手できず世に新しい発明を送り出せなかったものも多くあり、それらは冥王星に選ばれなかった概念の種子。冥王星のフィルターに選ばれた発明だからこそ、私たちの現代の生活に残るものを生み出せたとも言えます。
1943年1月7日の厳寒の夜、テスラはニューヨークのホテルの一室で孤独な死を迎えます。
翌朝、掃除に来たメイドに発見されるという寂しい終焉でした。その死後長い間、テスラは世間から忘れ去られたかのように見えましたが、生誕100年にあたる1956年にテスラ博物館の設立とそれに続いた、世界中の科学者を集めた記念会議(記念切手や記念紙幣も発行された)の開催、磁束密度をあらわす国際単位系(SI組立単位)に「テスラ」が採用。国際単位系とはメートル法の単位をもとに整理された単位系で、これに名を使われている科学者は、ニュートン、パスカル、ジュール、ワット、オーム、ボルタ、アンペール(アンペア)、ファラデーなど、科学史上の巨人ばかり。テスラは彼らと肩を並べることで、ノーベル賞以上の栄誉を手に入れたといってよく、まさしく冥王星による再生と復権を死後1世紀に成し遂げたのです。
参考資料:[知られざる天才 ニコラ テスラ] 新戸雅章 著