ニコラ・テスラ⑤― テスラの水星

水星は双子座の支配星ですが、7歳から15歳くらいまでの年齢域の天体で、兄弟を象徴するものでもあります。テスラの出生図の中で、他の惑星との関わりを持たずぽつんと孤立している水星は、幼いころに亡くした兄のようでもあります。

頭がよく両親から溺愛されていた兄ダーネは、12歳の時に謎の事故で命を落とし、テスラが成人してずっと後になってもなお、兄の死にまつわる悪夢や妄想に苦しみます。テスラに生じる狂的な数々の恐怖症と強迫観念について、ダーネの死がどの程度関与したのかは不明ですが、その徴候は若いころから現れていました。

水星は神経や知覚に関連します。テスラの水星は双子座にあり、また夜中の生まれであれば3ハウスという双子座の場所に水星が入ることになり、水星のエネルギーは過剰に強調され、孤立したその力はまるで諸刃の刃のように、時に超人的な知性をもたらし、時にテスラを過敏神経症による恐怖の世界に突き落とします。

平常時でもテスラが悩まされた症状には様々なものがありました。

●女性がする丸いイヤリング、特に真珠に激しい嫌悪感を抱く

●樟脳のにおいがすると、どこにいても激しい不快感に襲われる

●実験中に紙切れを水溶液の皿に間違えて落とすと、口の中に独特のものすごい味覚がわき起こった

●歩くときは歩数を数え、スープ皿やコーヒーカップの容積、食べ物の体積などを計算した

●他人の髪の毛には触れられない

感覚器官の鋭敏さやイマジネーションは時に常軌を逸するほどで、精神的病に苦しみます。最悪の状態では、

●3部屋先の柱時計の音がはっきり聞こえ、テーブルにとまるハエの羽ばたきがバタンバタンと耳を刺激

●数キロ先の雑踏や30キロ先の汽車の汽笛が、身体や椅子を激しく揺さぶった

●陽射しは頭蓋骨を貫き脳に突き刺さり、橋の下を通る時は圧力で頭を押しつぶされそうに感じた

●暗闇の中でも3メートル先の物体を識別できた

●身体は絶え間ない痙攣に襲われ、脈拍は平常と最高毎分260の間を上下

奇妙な症状は医師たちを驚かせましたが、有効な治療法は見つかりませんでした。

でもこの迷惑な力が数学の勉強には役立ちました。与えられた問題は絶対に消えず、頭の中の黒板には必要な計算と記号がたちどころに出現。また、数学と並んで早熟な少年の好奇心を満たしたのは読書でした。読後はほとんど丸暗記していたし、理解力も同年代の子供をはるかに超えており、語学の習得にもすばらしい才能を発揮しました。テスラがマスターした外国語は、母国語のセルボ・クロアチア語のほか、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語。学業の習得のスピードはめざましく、飛び級をしています。

チャート上で他の主要天体との関わりを全く持たない水星は、他からの制限を受けないため、その水星のエネルギーが純粋化され、極端になります。独自性や才能となる一方、扱いにくい要素が爆発するように顕現することも少なくありません。水星が孤立すると、物事に対する考え方が非常に独特になります。テスラは重度の細菌恐怖症、計算脅迫障害、嗅覚過敏、感覚過敏、独言癖を抱え、30代頃には逆行性健忘症、40代では鬱病も発症。

そのような狂気の日常のなかでも、1ページ分の活字、あるいは1ページに記載されている数えきれないほどの絵柄の正確な位置関係や大きさを、一度まばたきをする間に記憶してしまう能力は、写真記憶、視像記憶、あるいはどんな名で呼ばれようと、制御の難しい才能でした。その極端な水星が、現代の私たちの生活を支える数々の発明を生み出したのです。

参考資料:[知られざる天才 ニコラ テスラ] 新戸雅章 著 / [テスラ 発明王エジソンを超えた偉才] マーガレット・チェニー 著

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