前の連載記事でテーマにしたニコラ・テスラの研究に多大な投資をした銀行家がいました。その名は、現代を生きる私たちも耳にするJ・P・モルガン。彼はテスラのウォーデンクリフ世界無線事業に15万ドルを融資し、J・P・モルガンJr.からは1万5000ドルの融資を受けています。当時の電力事業の大半は、事実上モルガン・グループの支援によって成り立っていました。今回はそのJ・P・モルガンに焦点を当てます。
現在のJ・P・モルガンという超巨大金融企業を築いた彼ですが、当人のチャートを見る前に、この名を冠した世界有数の投資銀行が出来るまでのバトンを引き継いだ前のふたりに遡る必要があります。
はじめの一人は、J・P・モルガンの土台を作ったジョージ・ピーボディ。当時のアメリカは国をあげて鉄道、運河、高速道路の建設に狂奔し、その資金をすべて各州の州債でまかなっていましたが、多くの州が債務不履行に陥りました。メリーランド州もそのうちの一つです。貧しい生い立ちだった商人のピーボディは1835年、州債務の繰延べ交渉を任された三人の委員の一人として、交渉のために世界金融の中心地であったロンドンに渡ります。
この時期のピーボディは、出生図太陽の上にトランジット天王星、さらに出生図天王星と180度を形成しており、占星術でいう“中年の危機”と呼ばれる時期です。危機といっても怖いものではなく、これまで歩んできた人生とは大きく異なる方向へ舵を切る転換点を迎えることが多い配置です。
この時期、人は本来やりたかったことを強く意識しますが、自分の中の男性天体に勢いがあると、これまで属していた環境から飛び出すように新しい世界へと踏み出します。ピーボディも同様に、火星に海王星が180度を形成し、文字通り大西洋を渡り、新天地ロンドンで新しい事業を始めることになります。もちろんきっかけは交渉を任された委員としての渡英でしたが、運命の歯車がまわり、交渉から2年後には移住し、J.P.モルガンの前衛となるピーボディ商会の商業的成功のために、人生のほとんどをイギリスで過ごすことになります。
一緒にロンドンに渡った他の二人のメリーランド州の委員は、再交渉の見込みがないと判断し早々に帰国してしまいましたが、40歳のピーボディはなんとか英国の債権者側を説得しようと、豪華な夕食会に銀行家十余人を招きます。そして、州債を確実に返済するには新規融資をしていただく以外にないと主張しました。
その結果、債権者たちはメリーランドへの融資を断つどころか、新たに800万ドルもの資金を融通してくれたのです。まさにピーボディの顔と巧みなプレゼンによって融資を取り付けた瞬間でした。
ピーボディは創造性・才能やひらめきを表す5分割のアスペクトを多く持っています。これは360度の円を5分割するという意味で、純粋に5分割したアスペクトをクインタイル(72度)と呼びます。これを純粋な創造性、表現力とします。原型なので傍から見ても分かりやすくストレートに出ます。このクインタイルを倍にしたものがバイクインタイル(144度)、半分に割ったものがデシル(36度)です。
まず、魚座水星と牡牛座土星。魚座水星そのものは本来はあまり経済や競争の激しいビジネスには向かない天体ですが、牡牛座土星がしっかり安定させているのでイギリス人に対しさらなる投資・資産運用に説得力を持たせることが可能だったでしょう。また、彼は話し上手でしたが、二重あごに団子鼻のしわくちゃな顔にもみあげをのばし、決して人好きのする容姿ではありませんでした。そのような野暮ったい風貌でも、牡羊座火星・山羊座木星・乙女座天王星の5分割のトライアングルを使い、英国上流社会出身のパートナーたちの信頼を徐々に得て、ロンドン市内のムアゲート31番地に手形引受商会を開き、マーチャント・バンカーの仲間入りを果たします。
さらに、ピーボディはこの5分割で出来た美しいカイトを持っています。カイトとは、中心軸に2つの天体が180度を貫き、左右対称にソフトアスペクトを作る凧のような形からその名がついた惑星配置です。水瓶座太陽・乙女座天王星を軸にしたこのカイトは、自分が他者より抜きんでて、独立独歩の独創性でいままでに誰もやらなかったことに果敢に挑戦し開拓し、イギリスの商業銀行において不動の地位を得るということを表しています。

この頃のアメリカは国内開発の資金調達を英国資本に頼り切っており、大西洋を渡るお金の流れが存在していました。ピーボディはこの流れをうまく利用し、ロンドンの銀行がアメリカに代表を派遣するという当時の流れの逆を行って、アメリカの州債をロンドンで取り扱う大手業者にのし上がりました。
水瓶座太陽に天王星を対角に持つ独立心の強いピーボディは、英国に住んでビジネスをしていても、その環境に溶け込まずに抜け目なくアメリカ色を打ち出します。ジョージ・ピーボディ商会はアメリカの商会であるため、アメリカの新聞や雑誌を備え、アメリカに関するニュースの中心となり、ロンドンを訪れるアメリカの知人たちが気軽に立ち寄れる場所としてアメリカ的な雰囲気を大切にしました。
山羊座木星による愛国心はありつつも、天王星の影響が強いため、母国には12年間帰らなかったといわれています。
その後1854年、出生図の太陽が進行図の太陽と60度、ノースノードと90度を形成する年にジューニアス・モルガンを共同経営者として迎え入れます。ノースノードは未来を切り開くポイントですが、このタイミングでJ・P・モルガンに繋がる人物と出会うのは、まさに象徴的といえるでしょう。
参考資料:[モルガン家 金融帝国の盛衰㊤] ロン・チャ―ナウ 著