ジェームズ・キャメロンの名を世界に知らしめたターミネーターは、どこかに原作があったわけでも誰かの脚本だったわけでもなく、彼自身が作り出したストーリーです。彼は「殺人魚フライングキラー」で製作総指揮を務めたオヴィディオ・G・アソニティスと激しく対立していた頃、鬱状態になり悪性の流感にかかったりしてホテルの部屋に籠って熱にうなされました。その時の夢に出てきたのが、下半身が無くなってもナイフを床に突き立てて這って進む金属製の骸骨だったのです。ジェームズは夢から覚めるとすぐメモを取り始めます。
テスラの記事などでも触れましたが、私たちは何かの拍子にインスピレーションがやってくることがあります。それは海王星から夢のような形で降りてくることも多く、泡のように一瞬で消えてしまうので、うまく活用している人は現れた瞬間にメモを取ることを忘れません。誰にでもチャートの中に海王星はありますが、ジェームズの場合は太陽・冥王星とタイトに関連しているのでインスピレーションで得たものを大きなスケールでビジュアル化することに長けています。誰かに依頼されたのではなく自分のために脚本を書き、そのクロム金属で出来た骸骨を具現化した映画「ターミネーター」によってハリウッドでの不動の地位を得ます。
「夢は、どんなものでも、僕にとって、とても重要なものなんだ。日常の現実部分と同じくらい意味のあるものだし、心理学的プロセスの一部でもあることは確かだ。それに、個人的なことだけど、僕が映画を作る過程では、夢が決定的な役割を果たしてきたんだ。子供の頃、核戦争の夢をたくさん見た。それが自分にとってどういう意味なのかはわからないけれど、これまで作った映画のうちの何本かには、その影響が出ていることは確かなんだ。」と彼は言っています。
夢で見たものをビジュアル化する彼の能力には目を見張るものがありますが、今まで彼が手掛けたSF映画のスケッチを見ると、元々イラストレーターだったの?と思うほどの画力です。たとえば、映画「タイタニック」の中でジャック・ドーソンが描いたスケッチは、実際にはキャメロンが描いたもので、ローズが裸体でくつろいでいるところをジャックがスケッチするシーンがありますが、絵を描いている手のショットは実はジェームズ・キャメロンの手なんですね!
映画「アビス」では、VFX制作会社インダストリアル・ライト&マジックと組み、“水の触手”を創り出します。デジタルで描かれたこのクリーチャーは実在するかのごとく動き、1989年当時の観客にとっては斬新以外の何ものでもありませんでした。なにせ、それまで水の触手など、誰も目にしたことがなかったのですから。しかも、「アビス」から2年後、ジェームズはさらに進化した技術で、「ターミネーター2」の液体金属キャラクターT-1000を生み出します。彼がSF分野にどれだけ貢献したかを語るときに忘れてはならないのは、現実世界で存在し得るものの限界を越えて、自身の飽くなき創作力で観客を満足させるクオリティの映像を提供する、その才能でしょう。そのおかげで映画製作業界は多大な利益を得てきました。彼が何かのプロジェクトで己の意思を貫けば、結果として映画業界の視野を広げ、テクノロジーにおいて大きな前進を遂げることになったのです。新たな撮影方法や3Dカメラシステムなどの新テクノロジーに対して投資してきた彼が、「アバター」のようなSF大作を作り上げたのは、至極当然だったと言えるでしょう。
ジェームズの海王星は天秤座24度「蝶の左側にある三番目の羽」で、自分の魂のささやき、内側の衝動に忠実であるという事がテーマです。世間の流行や求められているものに応じるのではなく、どこまでも自分の本質で生き、表現すること。また、一つ手前の象意は「おんどり」で世の中の集団的な気分などを敏感にキャッチしそれをいち早くとらえたりしますが、誰も見たことのない映像を作ることにかけて非常に強い星の配置を持っている人です。
海王星は海や海外・海運などにも関連がありますが、ジェームズは深海に潜るのも大好きです。彼はマリアナ海溝のチャレンジャー海淵に潜水艇で潜っただけでなく、そこまで深くない場所で素潜りもやっています。彼にとってはそれが、地球上でできる太陽系外惑星の探検に最も近いことだと思っているのです。
「ティーンエイジャーの頃、宇宙に行くのを夢見ていた。宇宙、異世界、冒険を心から求めていてね。地球とは違う場所、全く新しい空間、異星人が住む土地をね。自分が宇宙飛行士になることはないだろうな、とわかっていた。だけど、スキューバダイビングなら学べるし、地球にありながらにして“別の”世界、地球にある異世界に行けるぞって思ったんだ。初め、ダイビングの習得は、海に対する愛情にはつながらなかった。でも、後からついてきたよ。段々海が好きになっていったんだ。”異なるもの”への愛情を持っていたからだ。異質で、奇妙なものが大好きで、実際にこの目で見たい、この手で触りたいと思っていた。その気持ちが『アバター』へと繋がった。」
彼は無神論者を自認していますが、彼のメッセージはとてもスピリチュアルです。
「『アバター』を観た人の90%は、視覚的な美しさやアドベンチャラスな物語を楽しんだだけだと思っている。残りの10%の観客がメッセージを汲み、それを今後の行動を改めるきっかけにしてくれたり、あるいは少なくとも他者への不寛容や自然に対する尊敬の欠如を気づかせる警鐘として真剣に受け取ったりしてくれたのだろう。他者を受け入れず、自然を蔑ろにするといった社会的傾向は、我々の文化を蝕み、人類の存続を脅かす要因になりかねない。」
ジェームズは映画を見た人々に、砂粒ほどの小さな変化でも与えられれば、一人ひとりの世界の見方が変わり、態度が変化する可能性に希望を抱いています。一人ひとりがもっと寛容な心を持てば世の中が良い方向に動き出すかもしれない。それは彼だけでなく同様に平和を愛する人々の願いでもあります。いま私たちが直面している地球規模の問題の多くは、争いや既得権益の垣根を越えて人類が団結すれば解決できることがあるでしょう。搾取するためではなく調和のために境界線を越えてゆく、それこそが海王星の願いなのかもしれません。
参考資料:[ジェームズ・キャメロンのタイタニック] 「SF映画術」ジェームズ・キャメロン著