ジェームズ・キャメロン③  SFを愛する金星

誰にでも、これが好き!と言えるものがあるはず。それは人によって、好きなんだけれどあまり人には言いたくないものや、好きなんだけれどなかなかできないものもありますね。でも、どんな形であれ、自分が笑顔になって没頭し時間を忘れてしまうものに違いありません。

ジェームズ・キャメロンの場合、それはSFであり、科学であり、宇宙でした。彼が幼少期から愛してやまないサイエンス・フィクションというジャンルは、彼が駆け出しの頃はまだメジャーではありませんでした。彼は「ターミネーター」の脚本を書き上げ、映画配給元のマーケティング部門のトップに売込むためにいろいろなアイデアを提案しますが、「これはSF映画じゃありません。SFだなんて言ったら、誤解を招きますよ」と返され、驚きのあまり開いた口が塞がらなかったそうです。タイムトラベルと殺人ロボットの映画がSF作品じゃないだって?世間では “SF=スター・ウォーズみたいな話” という公式が成り立ってしまっているのだと気づくのに少し時間がかかったそうです。SFを愛している人たちにすれば、その中にはさらにカテゴリがあり、明確な線引きがあるのですが、SFに興味がない人たちからすると、SFとファンタジーやホラーとの線引きがあいまいになってしまうのですね。「ターミネーター」がSFでなかったとしたら、どんなカテゴリだったのでしょうか。

彼の大好きなものを示す金星は天秤座にあり、金星と蟹座天王星はクインタイルという創造的な関係を持っています。天王星は科学技術や発明を象徴する天体であり、金星は獅子座水星とセプタイルという、創造的なインスピレーションをもたらす関係を持ち、いろいろなタイプの人間が絡み合うドラマやSFなどの映画を制作したりするのに適性があります。天王星は電気や稲妻とも関わりがありますが、天王星が関わると始まりはいつも唐突で電撃的です。

青年期のジェームズは、大麻好きの遊び人で、川のそばでブラブラしながらビール飲んだり、ポンコツ車を猛スピードで走らせたりしていたのが、「スター・ウォーズ」を見に行ったことがきっかけで映画製作の世界に魅了され、狂ったようにその世界に熱中し始めます。当時のガールフレンドのサラは本当に彼が狂ったのかと思い怖がっていたそうです。その人生の変化たるや、彼自身でさえ今も不思議に思っているくらいで、この時期は「180度の転換期」だったと語っています。

映画界で「スター・ウォーズ」が大成功を収め、SF映画もハリウッドの主流になり得るのだと認識されるようになったのですが、それ以前はSFなど特定のファンにしか受け入れられないジャンルだと思われていたのです。商業映画の中では完全に異端児。SFものといえば、ドライブインシアターのみで上映される低予算のB級映画でほとんど儲けにならないと考えられていました。1968年の『2001年宇宙の旅』でさえ、元を取るのに25年もかかっています。そこで描かれるのは、希望のない暗黒世界や黙示録さながらの絶望的な未来。そんな暗い悲観的なテーマでは、劇場の前に長蛇の列ができることなどあり得なかったのですね。

ジェームズは、SFが幅広い層に好まれるジャンルにならないのは、どの作品も偏った要素に焦点を当てすぎていて、読者や観客の心に響くような内容じゃないからだと早くから指摘していました。自身のSF作品の根底には誰もが共感できる何かがなければならないとして、それにふさわしい普遍的な物語を見つけようと懸命でした。人々の共感を生むことを重視する姿勢には、蟹座の象徴が重なります。大衆の共感が得られるSFとして、彼はかくして大ヒットした映画「ターミネーター」を世に送り出し、その後も「アビス」「タイタニック」「アバター」などの映画をその時代の最先端のテクノロジーを使い、人々が今まで見たことのないような視覚効果を次々に生み出していきます。楽しみごとにさまざまな工夫を加えていくのは金星・水星の定番ですが、彼は演出に関わる獅子座水星を持った人ですから、どのように魅せるか、が常にテーマになります。しかも、自分が描きたいビジュアルを作れないのなら、作れるようなシステムまで作ってしまう。映画のために本物の潜水器具や完璧に機能する遠隔操作の深海探査機(ROV=Remote Operated Vehicle)を造ったり、映画で必要なVFXやCGIなどの特殊効果を制作するデジタル・ドメイン社や、映画製作会社ライトストーム・エンターテイメント社などを設立しています。

ジェームズ・キャメロンの金星は天秤座9度「アートギャラリーに掛けられた3人の巨匠」。複数の視点から物事を再考するというテーマですが、これがそのまま表現され形になったような書籍を彼は自分がインタビュアーとなって出版しています。自分もかつて憧れた世界の映画界を牽引する巨匠たちとSF映画の過去・現在・未来について語り合う「SF映画術」。いまではSFはメジャーになりましたが、私たちがどのくらい初期のパイオニアたちに恩恵を受け、彼らが綴った作品のDNAを受け継いでいるのかを多くの人に知ってもらいたいという彼の思いが伝わってきます。この書籍には、エイリアンや宇宙、タイムトラベルやAI、これからの私たちの未来についてをスティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、クリストファー・ノーラン、ギレルモ・デル・トロ、リドリー・スコット、アーノルド・シュワルツェネッガーと対談する形で掲載されています。

天王星は水瓶座の支配星で、11ハウスを管轄する天体でもあり、未来を見据えて分析する知性を表します。ジェームズの金星・天王星に関与するSFは彼が制作する映画を通して、私たち人類が住む地球とその未来についてのメッセージを投げかけ、さらに問いかけるのです。

「SFは、単にモンスターや宇宙船が出てくる話ではない。人間の心をダイレクトに覗き込む。人類は、猛烈なスピードで夜のハイウェイを下り、出会ったカーブを全てろくに減速もせずに曲がろうとする暴走車と同じ状態になっている。我々は、種の存続を可能にすると同時に人類の脅威にもなり得るテクノロジーによって走らされ続けているのだ。SFは、そんな状態の我々のヘッドライトになっている。目の前に伸びる道を照らしてくれるから、人間は絶妙なタイミングでハンドルを切れているのかもしれない。もしそうでなければ、どんな結果が待っているか。その顛末を我々はSFを通じて知ることができる。SFの創り手が何世代にもわたって遺してくれた素晴らしい作品群を理解すれば、我々は人間という種としての運命をコントロールするための一歩を踏み出せるのだ。これは、サイエンス・フィクションの物語。我々自身が、人類の結末を決めることになる。」

ジェームズ・キャメロンは映画を通して、核による人類の危機や科学の誤用を示唆しますが、必ずしもその先の未来を暗いものとして捉えてはいません。彼の天秤座金星が象徴するように、人類は困難を乗り越え分かり合えるのだと信じているからで、彼の物語には必ず希望の光が差し込んでいます。

参考資料:[ジェームズ・キャメロンのタイタニック] 「SF映画術」ジェームズ・キャメロン著

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