ジェームズ・キャメロンが下積み時代を経て、一流の監督として世に認められるようになった映画「ターミネーター」以降の作品は、「タイタニック」を除き、SF作品が主流です。幼少期の頃から、ジェームズはSFのとりこになり、SFの本を読み漁ります。そんな彼の少年時代を、7歳から15歳の年齢域を表す獅子座水星を通して追ってみましょう。
ジェームズの水星は獅子座18度「科学の先生」。科学とは、単なる思いつきや個人の感想ではなく、誰が何度検証しても同じ結果になる再現性を持つ知識体系です。彼の場合、科学を「知識」として学んだというより、自分で作って、動かして、結果を見るという実験そのものを楽しんでいたのですね。彼は幼いころから物に触れることが好きで、弟のマイクと一緒に、あらゆるものを作ってはそれを動かして試していました。ゴーカートや筏から子供が遊ぶ木の上の小さな家(ツリーハウス)まで、手腕と体力がつくやいなや、ありあまる想像力にかられてさまざまな物を作り始めます。少年時代に彼が発明した中でも目を引くのは、巨大な岩を飛ばす発射台で、岩が落ちたところに深い穴があくほどの飛躍高度と速度を誇っていました。また、ネズミたちには不幸でしたが、ジェームズは潜水艦も設計して、その中にネズミを乗せてナイアガラの滝に放ったりしていました。

また、この頃からSFが大好きで、SF小説を片っ端から読み、そのジャンルの映画やテレビドラマにも没頭。表紙に宇宙船やロボットが描かれているペーパーバックや雑誌を見つけると、手を伸ばさずにはいられませんでした。ジェームズの水星と木星は30度で協調。これは水星の情報量が図書館並みに増えることを示唆しています。自宅から少し離れた地域の高校に入学した彼は、片道1時間かけバスで通い、通学中は言うまでもなく、SF小説を読みふける生活を送ります。ほぼ毎日1日1冊ペースでSF小説を読んだのですから、とんでもない量の作品を読んだことになります。そのようにどっぷりSF漬けの生活を送っていたので、彼はフィクション小説にSF以外の他のジャンルが存在するということすら大学まで知らなかったのです。
彼は果てしないSF小説を読んでも、ただ興奮したりするのではなく、SF作品に登場する異質な存在を通して問いかけられる「人間とは何か」というテーマが頭から離れなくなってゆきます。それは土星以遠の大惑星から投げかけられるメッセージですが、この後の太陽の記事で、人生の目的である獅子座太陽との関わりとともに改めて見ていきます。
大学時代にお気に入りだったドラマに影響を受け、多くのティーンエイジャーと同じように、ジェームズもオリジナルのSFストーリーを創作したいという情熱を燃やすようになります。彼の傍らで一緒にSFの世界に没頭していた友人ランドルフは、「彼にただならぬ才能と熱意があることは明白で、伝えたい物語に対しての妥協なきヴィジョンは、18歳らしからぬものだった。小説、映画、テレビドラマに登場するアイデアに興奮した彼は、もとのクリエイター以上に説得力のある、思慮深い、驚嘆せざるを得ない方法でそれらを捉え直し、己のものにしていった」と語っています。
また多くの作品を読んで分析し、早くからジェームズは「SFが幅広い層に好まれるジャンルにならないのは、どの作品も偏った要素に焦点を当てすぎていて、読者や観客の心に響くような内容じゃないからだ」と指摘していました。ジェームズのSFに関する知識にさらなる情報の与える蟹座木星の泉は、一般大衆からの目線や大衆感情を理解させます。だからこそ彼は、SFという専門性の高いジャンルを、SFファンだけのものにしたくなかったのでしょう。彼は神話も研究しており、自身のSF作品の根底には誰もが共感できる何かがなければならないとして、当時からそれにふさわしい普遍的な物語を見つけようとしていました。ヒットする作品、それが映画であれ小説であれ、大衆の共感はなくてはならないものであり、表向きがSFであっても、彼の今までの作品に多くの人の心に訴えるものが根底に流れていたのがわかります。
ジェームズ・キャメロンは「ターミネーター」以前の下積み時代に、自らを売り込み飛び込んだスタジオで、宇宙船の模型をデザインし、安価ですばらしいものを作っただけではなく、宇宙の動く背景に対して宇宙船が飛んでいるように見えるには、どのような撮影方法が一番有効なのかを考え出します。監督がその仕事ぶりを見て、彼を即座に特殊効果班の代表に昇進させ、自身の映画を制作するようになっても次々と頭に浮かぶ閃きをもとに新しい表現方法にチャレンジしていきます。彼の表現技巧を表す獅子座水星は天秤座金星とセプタイル(51.43度)を持っています。セプタイルは閃きや啓示的な洞察と結びつけて読まれるアスペクトですが、彼の場合それが単なる空想に終わらず、「こういう映像を実現するには、どう撮ればいいのか」という技術的な工夫へ向かっているのが興味深いところです。
若いときから、ジェームズが映画製作のなかで一番興味を引かれたのは特殊効果でした。南カリフォルニア大学の図書館に通っていた頃、映画に関する本を手当たりしだいに読むと同時にレンズやちょっとした映画用の機材を買い始め、それぞれがどのような働きをし、何を変えれば、どのように違った効果が出るのかを系統だって調べました。また、居間のまわりにドリー用のレールを作って、想像力や着想に駆られるまま実験したりしています。
今までヒットした映画のストーリーはどれもとても良くできているのに、彼は自分の仕事の中で、脚本が一番の弱点だと感じています。映画の青写真として脚本を見るのは楽しめても書くことをひどく嫌っているのです。「映画を作る上で一番退屈で、孤独で、ぞっとする部分なんだ。創造力のサイコロが投げられる瞬間だから。それに、出た目がラッキーかどうかわかるまでに、何カ月、たぶん何年もかかるし、何百万ドル費やすかもしれない。真っ白なページ….そいつのまわりを何週間もぐるぐる歩き回っている。」
脚本を書く獅子座の水星は、メジャーアスペクトがありません。なので、いつ降りてくるか分からないインスピレーションを待つことになるわけですが、獅子座は儀式とも関係するサインなので、最初の1ページを書くまでに、無意識の儀式のように生活臭がなくなるまで家の中を掃除したり、本棚の本を著者のアルファベット順に並べ替えたりしてしまいます。
ギネス記録を打ち出すほどのヒット映画を生む映画監督が、眉間にシワを寄せながら掃除をするところを想像してしまうとちょっと笑ってしまいますね。
参考資料:[映画と人生] 「SF映画術」ジェームズ・キャメロン著