前々回の記事ではタイタニック号を発見したロバート・バラード氏を取り上げましたが、その後、北大西洋の4,000メートルもの深海に眠る、かつての豪華客船を12回も見に行ったハリウッドの映画監督がいました。
タイタニックの沈没というドラマチックな悲劇は過去にも何度も映画化されてきましたが、その中でも1997年に公開されたジェームズ・キャメロン監督・脚本・制作の「タイタニック」はさまざまな意味で、その後の映画史上の記録を塗り替えるほどのものでした。
公開から2027年で30年になる「タイタニック」ですが、IMDbの集計ではアカデミー賞(オスカー)、ゴールデングローブ、グラミー賞などで126受賞・84ノミネートを果たしています。そして現在までに、アメリカ国内の週末興行収入でタイタニックは15週“連続”で堂々の1位でギネス世界記録になりました。ちなみにE.T.は通算16週(連続ではない)で1位です。今ではNetflixなどの映画配信サービスで自宅で多様多彩なものを視聴できるようになり、映画館全盛期だった時代から比べると、劇場に足を運ぶ感覚が少し遠のいた感があります。また、ひとつの映画の劇場上映期間もだいぶ短くなってきています。それを考慮すると、今後このとんでもない記録が打ち破られることはなさそうですね。
このタイタニックが一番初めに公開されたのは実はアメリカではなく、東京国際映画祭のオープニング招待作品として1997年11月1日に渋谷Bunkamuraで公開されています。その当時はまだ世界的なスターという位置づけではなかったものの、「ギルバート・グレイプ」の出演から日本では既に人気となっていたレオナルド・ディカプリオを一目見ようとチケットを持っていないファンおよそ2,000人が文化村に殺到。3日間会場前で徹夜していたファンまでいたそうで、会場はパニック寸前になり予定されていた入場セレモニーは中止に。ふたりの警備には49人が配置されていましたが、自分のファンが殺到していることを知って、レオナルドはバルコニーから少しでも顔を見せてあげたいとファンの前に出ようとしましたが、許可されなかったようです。この日は射手座の火星・金星が合。若い女性たちが海外スターに熱狂する要素がうかがえます。また、創造性や演出、遊びを表す10分割系のアスペクトが非常に多く、蠍座太陽が象徴する、多くの人々の労力が圧縮されたような映画祭の姿と、参加している関係者や招待客が一同に楽しんでパーティーをするような、楽しく華やかな雰囲気がチャートにも表れています。

また、映画タイタニックのチャートとして、題材になったタイタニック沈没の瞬間と、第10回東京国際映画祭とジェームズ・キャメロンの出生図の3つを掛け合わせたコンポジット・チャートを出すと乙女座0度冥王星、獅子座29度太陽に牡牛座0度土星、射手座26度金星のグランドトラインができるのです。乙女座0度の冥王星はジェームズ・キャメロンの恐ろしいほどに徹底しこだわり抜いた再現性であり、獅子座29度は過去の悲劇的出来事を映像として再現させ世に知らしめることを表します。この太陽・冥王星にかかる金星・土星のグランドトラインが、その一連の作業が楽しくもあり、果てしなく骨の折れる作業であったことを物語っています。そして、その後の映画史上において多くの記録を打ち出したことも頷けます。
ジェームズ・キャメロンは映画制作について「悲劇的な事件を描き切るために、私は観客を、最期の時間を迎えているあの船に、実際に乗せたかったのだ。既存の作品で触れられていないと私が感じた唯一の領分は、心の領分だった。私は観客にタイタニック号のために泣いて欲しかった。それは船の上にいる人々のために泣く、早すぎる死を迎えようとする魂のために泣くということである。」と語っています。
泣いてほしい情緒的な映画であるにも関わらず、水のサインに天体がないのは面白い特徴ですね。占星術において極端に存在を欠くものは逆に強調され浮かび上がる特徴があります。獅子座の太陽に対し水瓶座の月が満月の配置をとっていますが、その月は客観的に過去の出来事を見つめるジェームズ・キャメロンであり、映画を見て外側から沈没に直面する観客でもあるわけです。タイムマシンで遡ったように過去の現実を寸分たがわず作り上げ、視聴者が船のデッキに立ったなら見るであろう光景を。そして冥王星が与える、死に至るすべての過程―恐れ、否定、怒り、絶望、そして容認―を体験するのです。
その歴史的事実をスクリーン上で扱うために彼は、実際のタイタニック号への調査旅行から始まり、多くのスタッフと調査に調査を重ね、実際の乗客の証言の矛盾検証をしたりと、果てしなく終わりのない作業を続けていきます。
海底探査で撮影した映像を元にタイタニックの内部を精巧に再現し、ディナーで使われる皿1枚から当時の各階級の人々の衣装に至るまで、完璧に仕上げました。そして、エキストラにおいても、1000人に及ぶエキストラの中から「コア・エキストラ」と呼ばれる150人のエキストラに、当時のエドワード朝様式の歩き方、座り方、食べ方、そして話しかけられるまでは話さないという社交術まで教え、マナーと共に徹底的にリアリティを追求したのです。ワイン係までも、ワインは常にグラスの半分。いつ、どのようにして膝を折って会釈し、どのように給仕するか・・・・などなど、気が遠くなりそうな程の手引書が作成されたのです。
この映画のクライマックスはどこでしょうか。個人的には、年老いたローズが眠りにつき、その視点が深い海底に眠る沈没船のデッキからドアを抜け、船と共に沈んだ人たちの前を通り抜けるとともに時間が戻っていき鮮やかな大広間に続く階段の大団円のシーンが一番好きです。テレビで再放送をやっていると、ここだけ見て毎回泣いてしまいます。
かつてタイタニックに乗船していた人たちは、生まれ変わってこの映画の制作に関わったのかもしれないなんて思ってしまうのは私だけでしょうか。
参考資料:[ジェームズ・キャメロンのタイタニック] ジェームズ・キャメロン著