今回の記事は、ジェームズ・キャメロンの火星。彼の火星は射手座にありますが、太陽、冥王星、海王星と協調の小三角を形成する非常に恵まれた資質を持つ火星です。火星の象意のひとつには行動力・突破力などがありますが、彼の火星は自分が定めた目標を実現するために、ミサイルのように障害物を爆破。敵と対峙したならば、果敢に戦い相手を打ち負かします。また、体力や持久力にも優れ、自分ができることは他人もできて当然と思い、周囲にも同じ水準を求める傾向があります。このようなタイプを上司に持つと部下はついていくのがなかなか大変です。そんな射手座火星的なエピソードをご紹介します。

幼少期、ジェームズと弟のマイクはオタク的な性格が災いして、しばしばいじめの標的にされます。あるとき、近所の子供たちがジェームズのオモチャをいくつか盗んだので、二人はその犯罪を調査し、だれが犯人かを突き止めます。腹をたてる代わりに仕返しをしようと決めた兄弟は、その子供たちの家の庭に忍び込み、ツリーハウスを支えている枝をノコギリで切ってしまいます(!!)。そのあとオモチャを盗んだ子供たちがツリーハウスに入ったとき、ツリーハウスごと地面に落下し、そのうちの一人は病院に運ばれる顛末に。かなりやんちゃな少年時代ですね。
また、ジェームズは「ターミネーター」で成功を収める前に、映画「殺人魚フライング・キラー」で製作総指揮を務めたオヴィディオ・G・アソニティスと激しく対立します。制作スタッフの多くが、この映画は根を詰めて取り組むようなものでも、努力する価値のあるものでもないと思っているなかでも、ジェームズは真剣に仕事に取り組み、つまらない脚本でも何かを作り出そうとしていました。一日三時間眠ればいいという感じで、彼にとっては初監督作品だったので力が入ります。オヴィディオは撮り終わったフィルムを持って帰っては現像し、ジェームズを始めとしてスタッフの誰にも見せようとせず、「シーンはゴミ同然でカットをつなぐこともできない」などと言ってジェームズを叱りつけたり、取り巻き連中とカメラが回る15分前に、長いモノローグが入った新しい脚本をもって現れ、その通りに撮るよう主張するなど、現場を混乱させるような行動をとったのです。
撮影が終わってもラッシュを見せてもらえず、編集作業はまったく進んでいませんでした。オヴィディオは、どうすればこの映画を上映可能なものにできるかは自分のほうがよく分かっているとして、ジェームズをもう必要ないと判断したのです。監督を外されると聞いて激怒したジェームズは、思いきった行動に出ます。ジェームズは、発言権のない映画に自分の名前が出ることに我慢がならなかったのです。自らの手で何とかしようと決心したジェームズは、ある夜、編集所に忍び込みカードで編集室のカギをあけ、部屋の中の該当映画のフィルム缶を探しだします。夜な夜な忍び込んでは編集し、依然としてひどい出来だとは思いつつも、少なくとも、自分が手がけた映画だと言えるところまで作り上げたのです。ジェームズは結局つかまり、告訴するとおどされましたが、告訴状は一度も出されませんでした。
クレジットに監督としての自分の名があるため、彼は「殺人魚フライング・キラー」についての言い訳をせず皮肉をこめた誇らしさで「最高に飛んでるピラニア映画」と言っています。業界紙に「ピラニアは笑えるほどインチキくさい。ばかげた設定のありふれた化け物映画である」と書かれ、最低の映画と評されても、彼はまったく気にしません。一本の映画を撮り終えたという達成感を得て、どんなに難しい状況でもやっていけることがわかり、突き進んでいく自信を持ったのですね。そのやり切った達成感やすがすがしさは、射手座のスポーツマンシップ的なものにも通じています。この映画以降、次から次へと逆境に見舞われますが、克服しがたい問題にぶつかるたびに彼の監督気質は成長していったのです。
いまや数々の危機を乗り越え、上からあれやれ、これやれと指示するのでなく、実際に自分も現場の作業に加わり、具体的に指示を出すジェームズには、向かうところ敵なし。撮影現場で、俳優やスタッフたちに何度も撮りなおしを要求したり、数々の限界を超える要求をしていきます。「アビス」の撮影では、リンジー役の俳優に、セットを吹き飛ばすような声で「私たちは動物じゃないわ!」と叫ばれたり、トイレに行きたいと言ったスタッフには「息をさせてやってるだろ!それ以上、何が必要なんだ?」。弟のマイクには目を開けたまま水中の死体役をさせ、4回撮りなおし。トイレって前もって行っておいても、長丁場なら誰でも行きたくもなりますよね?「トゥルーライズ」でも、フロリダ史上でも稀なほどのうだるような熱波の中で撮影が行われたのですが、ジェームズは、「もし、現場を出てトイレにいくのなら、そのまま帰ってこなくていい。もうクビだから」と言ったとか。
スタッフたちは、士気が落ちないようにするため、そしてジェームズへの恨みを理解してもらうために、「ターミネーター3、オレはやらない!」「怖いものはなにもない、オレはキャメロンと仕事してるんだ」という文句がプリントされたTシャツを着てささやかな対抗を試みたようです。すごいですね。自分が加わっていないから、ちょっと笑ってしまいますが。
まさに、困難があるほど燃えて前へ進む力が強くなる、射手座火星のエピソード。火のサインって傍から見ていると真っすぐすぎる真剣さが笑いに通じる雰囲気があるような気がするのは私だけでしょうか。
参考資料:[ジェームズ・キャメロンのタイタニック] 「SF映画術」ジェームズ・キャメロン著