ジェームズ・キャメロン⑤ 未来を見つめる獅子

雑誌などの最後のページに掲載されている星占いは「太陽星座占い」というもので、誰もが知っている“わたしは〇〇座”という、太陽が入っているサインのみで読む占いです。実際の占星術は太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星という10の星が生まれた瞬間の空にどのように関連していたのかを見るものです。それは今回の人生の鋳型、パソコンでいえばOSに当たるもので、その人の心や行動、決定、生活に生み出すパターンに影響を与えます。

ジェームズ・キャメロンの出生図は、マイナーアスペクトを含めると9つの惑星がすべて太陽と調和的に連携しており、獅子座の創造性や表現力のためにすべての星が動くという配置になっています。自分の行動にも矛盾がなく、また自分の意図に賛同してくれる周囲の人々が集まりやすいことを表しています。まさに、脚本を書き、コンセプトを説明して、シーンの監督をするジェームズそのもの。自分で照明を作りたいし、カメラも回したい。スモーク・マシーンを自分で操作したいし俳優の顔に血を塗りたい、何でも自分でやりたい人なのです。

ジェームズの出生図の中で一番強い影響力を与えるのは、冥王星。この星は私たちの地球がある太陽系の中で一番遠い惑星でしたが、2006年に開催された国際天文学連合総会において、太陽系から外されてしまいました。それでも、占星術の世界では冥王星は私たちの世界に絶大な影響を与えるものとして外せない星です。

太陽は出生図において父親を象徴するものとして見ることもありますが、ジェームズの太陽にぴったりとくっついている冥王星は土星とも関連して厳格さを滲みだしています。彼の父フィリップは、製紙工場で電気技師として働いていました。しつけに厳格だった父の姿は、ジェームズにある種の職業への魅力の種を植えつけます。自分が命令し、みんながそのとおりに動くような職業。キャメロンの映画の現場は、映画製作のすべての面においてキャメロン将軍がしっかり管理し、軍隊的な的確さで動いていくことで有名です。その映画業界でも、完璧主義と頑固さが評判の彼は、自分自身と作品のために最も高い基準を設定する完全主義者でもありました。ジェームズの辞書には不可能という言葉はなかったのです。

「ターミネーター2」の現場では、スタッフや俳優を過酷な状況に置く厳格な監督としてのキャメロンの評判は高まってきていました。スタッフやキャストに対しての厳しい要求について、キャメロンは弁明しません。

「僕にとっては、単に仕事の過程の一部分なんだ。私的に取る人もいれば、そうじゃない人もいる。また、僕と一緒に働いてくれる人たちは私的な解釈をしない人なんだ。単に物事を動かせて、人を油断させずに考えさせようとしているだけの問題なんだ、と彼らはわかっている。僕はいつも先を考えようとするんだ。考えが足りないところはないか?準備ができていないところは?道路の三、四カ所に機材をセットするときに何か邪魔になるものはあるか?僕が人に厳しいのは、みんなにベストを尽くしてもらいたいし、考えぬいてもらいたいからなんだ。ただ惰性でやって、昼飯は何時になるのか聞くようなことはしてほしくない。これは任務であってパーティじゃないんだからね。」

ジェームズ・キャメロンの獅子座の太陽・冥王星は創造において徹底したこだわりを貫きます。冥王星は太陽系の外との接点ですが、地上において目的を具現化するために本人にも説明しづらいほどの衝動に駆り立てられ、それはありきたりなものではあってはならないのです。周囲で関わる人たちはそのカリスマ的な、圧倒的なパワーに魅了されつつ、それがどんなに支配的であってもこの獅子座太陽の生み出す大きな流れに巻き込まれていきます。彼と共に映画製作に携わった人たちは、既に長い経験を積んだ人たちや資質に恵まれた人たちでさえ、ジェームズに認められ称賛を得たいと思うようになります。そして、彼と組むのは厳しい作業になることが分かっていても、また関わってしまうのです。それは冥王星が魅せる“ありきたりではない世界”を垣間見るからではないでしょうか。

獅子座は健やかな自己主張にも関連するサインですが、映画「ターミネーター」や、「アビス」「アバター」などのSF大作を通して見えてくるメッセージは何でしょうか。今まさに、Anthropic社やOpenAI社を筆頭に人間のコントロールを超えたスピードで成長するAIに、人類が滅亡するかもしれないという危険性を理由に開発スピードを遅くするべきという議論が出てきています。人類は進化と共に多くの問題も生み出してきました。しかし同時に、ジェームズの世界では、人類は科学や戦略的思考を駆使し、困難に立ち向かい問題を解決することもできると信じています。彼の作る映画では、人間の醜悪な部分をえぐり出す一方で、最も素晴らしい資質にも光を当て賞賛するのです。そして、映画のキャラクターに物事を処理する能力を与え、誰もが同じ可能性を秘めていると伝えます。私たちが面倒な事態を引き起こしたとしても、私たちで決着できると訴えかけるのです。技術を悪用するのではなく善用するのだ。奪うのではなく与え、歴史を正しい方向に導けと鼓舞します。彼はずっと自身のSF作品を通じそう訴えかけてきたのではないでしょうか。

参考資料:[ジェームズ・キャメロンのタイタニック] 「SF映画術」ジェームズ・キャメロン著

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