ニコラ・テスラ⑦― テスラの献身と小惑星ベスタ

今回は、テスラの出生図にある小惑星ベスタに焦点を当ててみたいと思います。小惑星は惑星よりずっと小さい天体ですが、占星術では象徴的な意味を持っています。ベスタは聖火を守るかまどの女神。職務のために永遠の処女を誓ったことから、義務や使命、献身というテーマを持っています。恋愛ではなく職務に関係することが多く、やりがいにも関係します。テスラが何に使命を感じていたのか、彼をサポートした周囲の人たちの献身がどうあったのかを振り返ってみましょう。

「孤高の天才」という形容が一人歩きしているせいか、人嫌いなイメージが強いテスラですが、実像は決してそうではありません。悩み多き青年期にも、決して多くはありませんが、心を許せる仲間や友人は存在していました。その若き日の友人代表がアンタル・シゲティ。グラーツの工科大学で席を並べて以来、ブダペストの電話局での再会、そしてパリへと二人の交友は続きました。テスラがブダペストで神経を病んだときには献身的に支え、回転磁界の発見にも立ち会いました。渡米後はニューヨークに招かれて、交流システムの完成にも協力しましたが、五年後の夏に病気で亡くなってしまいます。慣れないアメリカで多忙な研究生活を送る発明家にとって、精神的に頼りにしていた親友の死はまさに痛恨の出来事だったでしょう。

再挑戦をめざす発明家の後半生を支えたのも、献身的なスタッフや友人でした。仕事上のパートナーとしてまず筆頭にあげるべきは、ジョージ・シャーフ。シャーフは1895年、研究所の再建とともに22歳の若さでスタッフとして採用されて以来、営業と経理を支えてきた文字通り腹心の部下でした。彼は天才発明家がこと経営に関してはまるで赤子同然だと悟ると、昼は研究所の経理全般を統括して働き、夜間は別の会社でアルバイトをしながら、無心に経営を支えました。シャーフは自らが会社の経営者となってからも献身を続けました。ある証言によれば、シャーフが研究所につぎ込んだ個人的資金は総額四万ドルにも達したといいます。シャーフはテスラ研究所の経営安定のため、既存特許の製品化に力を入れるべきだと説くことも多かったのですが、次から次へと沸いてくる発明の実現にばかり意欲的なテスラに説き伏せられてしまうのが主でした。

また、1910年代から長く勤めた秘書のドロシー・F・スケリットとミュリエル・アーバスは、順境のときはもちろん、逆境のときもテスラのもとに留まっています。晩年、彼女たちの給料を払えなくなるほど窮乏したテスラは、1917年に授与されたエジソンメダルを半分にして渡そうとしましたが、両秘書はそろって謝絶し、代わりにわずかながらも資金を雇い主に貸したというエピソードが残されています。

そして大きな支えとなったのは、ジョンソン夫妻。雑誌編集者ロバート・アンダーウッド・ジョンソンとその妻キャサリンは、決して裕福ではありませんでしたが、知的好奇心に富み、芸術を深く愛する夫妻でした。
彼らは大富豪や文化人を招いてパーティを開き、テスラにアメリカ社交界や著名な芸術家・政治家たちと出会う機会を与えます。さらに、発明に融資してくれる投資家を探すうえでも大きな役割を果たしました。

晩年窮乏したロバートをテスラが支援するなど、その友情と信頼は、妻キャサリンが1925年に亡くなり、ロバートがその12年後に亡くなるまで変わることがありませんでした。

ベスタはテスラの出生図では双子座3度の「チュイルリー公園」にあります。双子座は、1度で観察し、2度で無意識の反応を待ち、3度でそれまでに得た点と線を結びつけ、知識へと昇華していく度数です。チュイルリー公園は、人間が自然界から生み出す美しい造形の象徴であり、法則を理解することで生まれる豊かさと生産性を意味します。このベスタは、友人や同僚を示す天秤座の月と火星にどこか閉塞感をもたらし、さらに太陽や金星とも絡み合い、複雑な緊張関係を生み出しています。それは、身内のように献身的に支えてくれる友人を持つ喜びと心の充足を示す一方で、死別や突発的な出来事、さらには金銭的困窮によって未来の可能性が閉ざされていく感覚とも結びついています。

天秤座の天体と絡むベスタは苦しさが滲みますが、魚座の海王星と関連するベスタは調和し、遊び心に満ちています。苦しさを伴う対人関係における献身と、人類の生活を変える大発明を生み出す夢に突き動かされる献身。その両方がテスラの中には同時に存在していました。ベスタは義務や献身を象徴する小惑星ですが、テスラにとってそれは単なる自己犠牲ではなく、「世界に奉仕したい」という理想の火だったのです。
その火は時に彼を孤独にしながらも、多くの人の心を動かし、幾度となく人生の危機を乗り越えさせた原動力だったのかもしれません。

参考資料:[知られざる天才 ニコラ テスラ] 新戸雅章 著

[テスラ 発明王エジソンを超えた偉才] マーガレット・チェニー 著

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