J・P・モルガンという金融帝国を作ったピアポントの牡羊座の太陽はお金や資産に関する2ハウスにあり、4つの惑星とドラゴンヘッドが入っています。ドラゴンヘッドが入っている場所は今世でのテーマとしても見ますから、お金や資産に関係することが人生のテーマであることが分かります。
ピアポントの太陽には水星以外の星とのメジャーアスペクトの強い関連が無く、明確な外的な方向づけを持つというより、自身の内側から湧き上がる衝動によって動く傾向が強く、利益機会を見つけた瞬間に、周囲の判断を待たずに単独で意思決定し、実行します。20歳の頃にはその人騒がせで早熟な才能を発揮して周囲を驚かせました。金融恐慌のさなか、彼はウォール街のダンカン・シャーマン商会に勤めていましたが、ニューオーリンズ出張中に会社の許可なしに買い手のないブラジル産コーヒー豆を船一隻分買い占め、これを売り抜けてあぶく銭を稼ぐという恐ろしい大博打をやってのけます。こうした規格外の判断は、牡羊座の太陽と水星が持つ、先に動くことを優先する性質をよく表しています。
さらに4年後の1861年、ウォール街の戦争景気のさなかにピアポントはちょっとグレーな商取引にも手を出します。当時ニューヨークの政府兵器庫に貯蔵されていた旧式のホール・カービン銃5,000丁を、ある業者が一丁3ドル50セントで払い下げを受けたのをはじめ、これを一丁11ドル50セントでまた買い受けたサイモン・スチーブンズなる男に、ピアポントが2万ドルを出資。スチーブンズは、この旋条のない旧式銃にらせん状の旋条をつけて射程と命中精度を大きくしてから、北軍の指令官に一丁22ドルで転売したのです。この間3カ月で、改造の手が加えられたとはいえ、政府は当初の6倍強にもはね上がった値段で売った銃を買い戻した計算になります。

ピアポントの水星は火星と天王星の7分割のアスペクトの小三角を持っています。理屈ではなく無意識からくる思考と計算が太陽にもたらされ、情報が出揃うのを待つのではなく、不完全な状況でも即座に仮説を立てて資金を動かします。それは自身でコントロールするというより、大きな流れを生み出し、その流れに自身も巻き込まれていきます。この水星は情報格差を巧みに使いタイミングを読み、牡羊座ですからリスクを恐れず、社会的な善悪よりも目の前の機会を逃さないことが優先されるような判断を取りやすく、大胆に好機をつかんで資金を動かします。もちろんこの件は当時新聞で取り上げられ議会調査が入り、ちょっとしたスキャンダルになりますが、戦時中だったこともあり断罪された訳ではありませんでした。このパターンはその後ピアポントの人生において何度も投機の原型パターンを生み出しました。市場の歪みや穴を見つけてそこに資本を流し込んだのです。
若い頃のピアポントは、アメリカの屈強な無法者に英国の洗練された服を着せたような観がありました。幅広い肩と厚い胸、ボクサー並みの両手をした6フィートを越す長身に、碁盤縞のチョッキがよく似合う男。ジューニアスが常に沈着冷静だったのに対し、ピアポントは移り気だった。若い頃の写真を見ると、一勝負したくてうずうずしているような、いらいらした表情がうかがえます。それは常になにか新しいことや刺激を求める牡羊座の火だったのかもしれません。
牡羊座は、社会的権威や構造、家庭や共感を表す山羊座・蟹座の軸に対立するサインなので、権力にへりくだったり取り込まれることを嫌います。ベルギー国王レオポルト2世の財務相談に乗る時も、国王がピアポントのところまで船でやってきましたが、国王を庶民扱いするような形になってもそれを気に留めることはありません。英国国王エドワード7世とは財務相談に乗る間柄でしたが、ロンドンの邸宅に国王を招き、ダービー伯爵夫人の有名な絵を見た国王が、天井が低すぎる、と言って、「なぜここへ掛けたのか?」と尋ねると、ピアポントは、詳しく説明する必要はないと考え、「ここが好きだからです、殿下」と手短に答えただけでした。ピアポントの娘婿のハーバート・サッタリーによると、国王と銀行家との間柄はまったく対等で、「二人の友人同士も同然で、お互いに気遣いせずに満足しているみたいだった」ということです。
ピアポントは、生まれつき無駄口をきかないぶっきらぼうな性格で、じっくり時間をかけて分析するタイプではなく、突然のひらめきで事を片づけるのが得意で、ある弁護士によると、「モルガンには、思考を5分間集中できるものすごい力があった」という話です。彼の堂々たる風采は、ガラスで囲んだ鏡板貼りの彼の執務室を訪れる人々にはすぐに感じとれるほどでした。話の長い訪問客には、ただ書き物に打ち込んで顔を上げないで、相手をたじろがせます。側近の者の話では、「パートナーたちは、呼ばれないかぎり近寄らなかったし、呼ばれると驚いた顔をして給仕のように駆け込んできた」という話です。同格のパートナーたちでも、ピアポントのことを丁寧にミスター・モルガン、あるいはシニア(上席)と呼んでいました。彼の発する妖気にはひどくぞっとするものがあって、街路上で出会った人々が避けて通るほどだったそうです。
ピアポントのぶっきらぼうで短気な性格と、人との応対のそっけなさを物語る逸話は多くあります。牡羊座は単調な繰り返しが苦手なサインですが、実際彼は一つのことに注意力を長く集中できないたちで、たとえば午前11時から午後3時~4時頃までしか仕事をしないことがよくありました。これはその間にサンドイッチとパイとコーヒーの昼食をとる時間も含めてです。ある取引先の危機を救ってやり、相手が感謝して泣き出したのですが、ピアポントはドライに「もう結構です。忙しくてそんなことにつき合っている暇はありません。さようなら」と言って部屋の外に送り出したと言います。
国家や政治家、競合金融機関に臆することなく、また意図せず結果的に新境地を切り開くことになったピアポントは金融という大海原の海賊のようです。牡羊座は新しいことを始めるサインですから、既存のルールの外側で利益機会を見つけ、そこに最初に乗り込むその姿は、まさに未開拓の世界に最初に乗り込んでいく海賊そのものですね。彼は実際に自分の船に「Corsair(海賊)」と名前をつけています。その人生の船旅はどんなものだったのでしょう。続きます。
参考資料:[モルガン家 金融帝国の盛衰㊤] ロン・チャ―ナウ 著