ニコラ・テスラ⑧― 晩年の友人

世界では第1次世界大戦が終わるころ、テスラは60歳になっていました。資金不足などの問題もあり、1916年にはニューヨーク市の人頭税935ドルの不払いで裁判所への出頭を命じられています。こうした混迷と悲嘆に明け暮れていた時期でしたが、晩年の親友ともいえる二人の友人との出会いがありました。

ひとりは中年で、ヨーロッパではすでに名が通っていたユーゴスラヴィアの彫刻家で、自作をアメリカで売り出そうとニューヨークにやってきたイヴァン・メシュトロヴィッチです。

テスラとこの彫刻家は、ユーゴスラヴィアの山中で過ごした子ども時代の共通の思い出話や、自作の詩を語り合いました。二人とも深夜遅くまで仕事をし、同じような問題を抱えていました。メシュトロヴィッチはスタジオがないため、自作の大理石の塊をかついでホテルからホテルへ移動しなければならず、テスラも研究所を手に入れるだけの余裕はもうありませんでした。そのため、いっしょに遠くまで歩く道すがら、テスラはマンハッタンの鳩に毎日餌をやっている話を彫刻家に語ったりしていました。
彫刻家が母国に帰ってしばらくたった後、テスラは自分の胸像の制作を依頼します。諸事情でお互い会うことはできませんでしたが、テスラが送った写真をもとに、沈鬱な天才の本質をとらえた、感情こまやかで力強いブロンズ像が鋳造されました。

イヴァンの生まれはテスラの出生地に近いクロアチアで、1883年8月15日生まれ。天秤座は裁判や訴訟、交渉事と縁のあるサインですが、テスラも特許取得に関する数々の裁判などで疲弊していました。そのような問題の多いテスラの蟹座太陽・金星と天秤座月・火星に対し、イヴァンの獅子座太陽や乙女座天王星は、テスラの緊張を調停するポジションに持ち込みます。

獅子座は創造のサインで、芸術家肌のタイプですから、テスラの心を細やかな分析力と裏表のない人柄で大いにリラックスさせたのではないでしょうか。テスラの太陽と調和するように存在するイヴァンの蟹座木星・牡牛座海王星の小三角が、現在ベオグラードのテスラ博物館にあるテスラ像を生み出したのですね。

もうひとりは、晩年に発明家の仲間のひとりとなった19歳の科学記者ケネス・M・スウィージーです。テスラとは48歳差となるこの若い友人は、テスラの第一の擁護者であり崇拝者でもありました。テスラが亡くなるまでの20年間、多くの時間を共有しています。

テスラとスウィージーは、夜間に町を抜けて遠くまでよく散歩をしたようです。様々な訴訟や資金の工面、対人関係などに疲れたテスラを晩年慰めたのは鳩でしたが、スウィージーにもお気に入りの鳩を紹介しました。テスラにとってスウィージーは、年は離れていても自分を理解してくれる数少ない理解者でした。

スウィージーにとってテスラはヒーローでした。彼はテスラの偉大さを周囲の人々に理解させるのが上手でしたが、同時に、今の生活の快適さの恩恵をもたらした発明家を忘れ去る人々の物忘れの早さをうとましく思っていました。そこで1931年、テスラの75歳の誕生パーティーを企画し、世界中の著名な科学者や技術者に何か送ってもらうよう依頼したところ、山のような祝辞と贈り物がテスラのもとに届きました。

スウィージーは亡くなるまでテスラを支え、葬儀に立ち合い、死後はテスラの業績を新聞や書籍で紹介し、テスラ協会の設立にも貢献します。人生の大半をテスラの名を広めることに費やしました。

彼もテスラの伝記を執筆していたようですが、途中で亡くなったため出版されなかったのが悔やまれます。そのかわり、彼が集めたテスラに関する資料は現在スミソニアン博物館に寄贈され、テスラ研究の重要なアーカイブとなっています。

イヴァンと同様、テスラの持つ太陽・金星と月・火星の対立を和らげるように、スウィージーは双子座20度近辺に太陽・火星・冥王星を、水瓶座20度に土星、牡羊座23度に木星を持っています。これらの天体はテスラの天秤座の月・火星にカイトという大きな調和を形成します。まるで怪しげな煙に身体を取り巻かれ、実体が見えなくなっていたテスラの社会的名声の霧をほぐし、死後の名誉回復を行うという果てしない作業を継続させる配置のようにも見えます。

また、強い縁を持つ関係には決まって同じ天体の組み合わせが繰り返し現れるものですが、彼らのシナストリーには水星・天王星の組み合わせをお互いに掛け合う構図が見られます。水星はコミュニケーションや知性を表しますが、テスラを支え、近しい友人のテリトリーに入るには、テスラの持つ天才的資質や考え方を理解する知性と、同じ質のコミュニケーションを持たなければなりません。スウィージーはその資質を持ち、まるで阿吽の呼吸のようにテスラを助け、励まし、支えました。

そしてもうひとつ、二人を強く引き付けたものがあります。この二人は、心の傷などを表すキロンという約50年周期の小惑星が、サイン違いでほぼ同じ位置にあります。スウィージーのキロンは山羊座の終わり、テスラのキロンは水瓶座の初めにあります。それは、スウィージーの「自分の崇拝者の功績が世に認められない」という山羊座的痛みと、テスラが一人での研究を好むことで学閥と交わらずに生まれる数々の障壁やジレンマ、そして先を行き過ぎて発明が理解されない苦しみが交差していたからかもしれません。ふたりは、世界の見え方の痛点が似ていたのでしょう。他の人には理解できないテスラの苦しみを、スウィージーが理解していたことが透けて見えます。

天才の人生は、しばしば孤独と隣り合わせです。それでもテスラの晩年には、彼の思想を理解し、その名誉を守ろうとする友人たちが現れました。ホロスコープを読み解くと、そうした人々との出会いが不思議なほど象徴的に示されているのが見えてきます。

参考資料:[知られざる天才 ニコラ テスラ] 新戸雅章 著

[テスラ 発明王エジソンを超えた偉才] マーガレット・チェニー 著

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次