これまで見てきたJ.P.モルガンは、海や船と深い関わりを持った人物でした。その流れの中で今回は、彼が乗船するはずだった豪華客船タイタニック号を、沈没の悲劇から長い年月を経て海底から発見した人物に焦点を当ててみます。
現代の豪華客船と言ったら、およそ全長365m(サッカー場3.5個分くらい)の、巨大ショッピングモールやウォーターパーク、カジノ、アイスリンク、ジップラインなどがある海上のテーマパークのような様相を帯びてきましたが、いまから114年前、タイタニック号は芸術や文化が美しく花開いたベル・エポックの時代を象徴するように当時の粋を散りばめた宝石のような、アメリカへの夢と希望を乗せた豪華客船でした。
「決して沈まない船」と言われたタイタニック号は1912年4月14日23時40分、氷山に衝突し2時間40分で北大西洋の海に沈みました。その後73年の時を経て、タイタニック号は1985年9月1日、海洋学者ロバート・バラード氏率いる探査団によって再びその姿を世界に見せることになります。
バラード氏は幼少の頃から海に慣れ親しみ、大学では海洋地質学を学び、アルバイトでは水族館のイルカの訓練などをしていました。その学業の途中に海軍に召集され、海軍の命令で海洋学研究所の深海調査部の一員となります。いつから自分の頭の中にあったのか分からないほど、彼の頭の中にはいつかタイタニックを発見したいという強い思いがありましたが、仕事仲間からは、もっとまともな科学研究をしたらどうだい?とたびたび物笑いの種にされたそうです。
バラード氏の太陽は蟹座9度「水の中の魚へと手を伸ばす小さな裸の少女」。自然界の神秘などを理解しようとする試みを表す度数です。この太陽の近くには蟹座木星5度「列車に破壊された自動車」があり、突発的で破壊的な出来事によってたびたび探査計画が中断・後退を余儀なくされることを示します。それでも木星は困難な状況の中で思わぬ救いをもたらすこともあり、探査船が事故で高価な機材を乗せたまま沈んでも、60万ドルの保険をかけていたことによって窮地を切り抜けます。木星は冥王星とも30度で協調し、不運な状況に追い込まれても不屈の忍耐と継続力で、彼のチームはその都度障害を超えていきます。資金繰りを考えての研究所名を掲げたタイタニック号の追跡はやめてもらいたいと言われ苦境に立たされても、今度はナショナル・ジオグラフィック、BBC、米大手テレビ局など、新しいスポンサーとのつながりを作っていきます。

バラード氏の太陽は獅子座火星と双子座土星の協調した小三角を持っています。幼少の頃からの海の中への情熱を持ち続け、双子座土星が象徴するライバルたちに勝ったり負けたりしながらコツコツと経験と実績を積んでいきます。
タイタニックが沈没した海域は大西洋の中でも最も危険な北西海域です。天候が順調なのは一年のうちほんの数か月で、その間でさえ大しけになることも多いところでした。ひとたび海に潜っても、予想以上に強い海流に流されコースから外れたりしてしまいます。峡谷や割れ目があちこちにある海底ではタイタニック号のような巨大な船でも小さな点でしかありません。
タイタニックを発見するという夢は、実現しそうになっては打ち砕かれ、資金難や数多くの失敗と試行錯誤を繰り返します。そしてついに彼を含む調査隊は、今までの経験に基づいた新しい方法を導入します。それまで船体そのものを探していた調査隊は、発想を大きく変えました。物体が深海に落ちていくときには海流の力で物体が破壊され四方に散らばり、長く尾を引く彗星のような形になることが多いことから、巨大な船を一点で探すより、広大な海底からタイタニックの破片を探すように探査方法を変えたのです。時間も調査費も限られる中、諦めかけたそのとき、海底に横たわっているタイタニック号のボイラーを発見したのです。
調査団のクルーたちは喜びに胸を震わせ、握手を交わしたり抱き合ったりしていました。そのとき時計を見ると、時刻はタイタニック号が海底へ姿を消した午前2時頃。クルーたちは1500人以上の犠牲者を偲び、静かに黙とうを捧げます。
タイタニックが発見された1985年9月1日のチャートでは、トランジットの蠍座冥王星と獅子座金星が90度(バラード氏の出生図の冥王星と合)。さらに出生図の太陽・木星と、トランジットの蠍座冥王星、ドラゴンヘッドによって協調した小三角が形成されていました。ドラゴンヘッドは今世での使命を象徴しますが、この日は彼が長年抱き続けた悲願を達成した瞬間でもあったのです。

それから約1年後の1986年7月、再調査のため再び海底探索を開始。立ち上がったり手足を動かしたりすることもできない小型潜水艇の中に成人男性3人が、肩を寄せ合うように乗り込み、海底の暗闇の中へ降りていきます。海底の圧力の中、計器が故障したり、電池貯蔵庫に海水が入ってしまい探査時間を短縮しなくてはならなくなったり、地上の探査装置も突然作動しなくなったりと、海上に戻らないと命を落とす危険の中、多くの映像を捉え海上へ戻ります。
バラード氏のチャートでは獅子座5度の冥王星と多くの星が関連しています。出生図ではソフトアスペクトが多いですが、一歩間違えばクルーの生死にかかわるような事故に見舞われたりと気の重くなるような回収作業をたびたび経験するのは土星の関与がうかがえます。土星は試練や責任を象徴するため、成果の裏には常に危険や重圧が伴っていたことが読み取れます。
バラード氏は米国議会で海底に眠るタイタニック号を海洋記念碑に指定するよう強く求め、亡くなった1500人以上の人々を追悼するため、遺品をそのままにしてほしいと、現場をそのままの状態にしておくよう求めました。しかしその後、船から遺物を回収する権利を誰が持つかをめぐる競争が激化。その背景には、遺物を記録し保存しようとする意図もありましたが、同時に、遺物の販売や一般公開による利益を目的としたものも多くあったのです。
彼は最後の探査で、タイタニック号が沈没した時に、多くの人が最後を迎えた船尾の上に追悼文を刻んだ金属板を置いていきました。彼はタイタニック号を犠牲者が眠る墓標のように考えていたので、タイタニック号の調査からは何も持ち帰らないことを自分に誓っていました。
「私の関心は海の上ではなく海の下の出来事だった。海岸を散歩しながらいつも興味を引かれたのは、押し寄せる波より、浜辺に打ち上げられたいろいろな残骸や、潮によって生じる水たまりの中の海の生物にだった」
蟹座は月を支配星とする愛情や育成のサインです。彼の月は水瓶座ですが、水瓶座らしい最新技術への関心や分析力が、深海探査という最先端技術の開発にも生かされたのでしょう。多くの人の夢や希望を、命と共に飲み込んで深海に沈んだ物語に思いを馳せ、探査船に乗って深く潜っていく蟹座の水は、蠍座や魚座の海とつながっています。冷静で分析的な心は1912年の悲劇が演じられたその場所で記憶を蘇らせます。
「静かで平和な深海の底は、タイタニック号とともに沈んだすべてのものにふさわしい遺跡だ。私たちが発見し、撮影した残骸は、傲慢の誤り、失われた時代、取り戻せない無邪気さへの記念碑とも言えよう。それはまた、悲劇のなかでそれぞれの役割を演じた、過ちをおかした人々、罪のない犠牲者に対する記念碑でもある。タイタニック号を思うとき、私の脳裏には、傷つきながらも気品にあふれ、ついに安息を得た船首の姿が浮かんでくるだろう」
参考資料:[タイタニック発見] ロバート・D・バラード 著
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